原告準備書面 第2

平成29年(行ウ)第39

 

原告 阿部洋二 外13

 

被告 柳泉園組合管理者 並木克巳

 

 

 

準備書面(2)原告校正済み案

 

 

 

平成29731

 

 

 

東京地方裁判所民事第36部 御中

 

 

 

原告ら訴訟代理人弁護士 小沢一仁

 

 

 

第1 原告ら準備書面(1)における主張の補充(本件契約の締結が違法・不当なものであることを基礎づける事実等に係る主張の補充)

 

 1 債務負担行為について

 

 (1)将来の財源の確保を怠った決議した債務負担行為を前提にする本件契約の締結が違法であること

 

債務負担行為は、会計年度独立の原則(地方自治法(以下「法」という。)2081項)にもかかわらず、複数の年度にわたり支出が予定されている(債務を負担する)事項等について、あらかじめ予算で債務負担行為として定めておくべきものをいう(法214条)。

 

債務負担行為を定めるには、あらかじめ将来の各年度における歳入の見通しを明確に立てておく必要がある。本件における訴外組合の歳入とは、構成三市の分担金である。

 

しかし本件では、将来分担金の支払いを求められる構成三市の市議会には提案すらされておらず当然議決もなされていない。

 

本件組合の管理者ないし副管理者は、構成三市の市長である。市長は執行機関の長として、議会に予算を提案して議決を得たのちそれを執行する権限を有している。しかし、議会の議決を経ない予算を執行することは許されていない。議会に提案する予算の中には将来支払いが発生するものを継続費、繰越明許費、債務負担行為のいずれかに分類し計上することが定められている。従って構成市に将来負担が発生する契約を執行機関の長たる市長が議会の議決がないまま行うことはできない。訴外組合においては執行当局者である管理者・副管理者であるとしても、構成市の市長としてかかる契約に参与したことは失当であり、法に違反する。

 

さらには、原告森輝雄(西東京市議会議員)が西東京市議会で質問したところ、当局は、「柳泉園組合が、債務負担行為を設定したとしても、直ちに本市が債務負担の義務を負うことにならない」と答弁した(現在議会議事録作成中である。)が詭弁である。

 

「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」第2条4号には訴外組合の将来債務を当該市の将来負担に含めることが記載されており、訴外組合の債務負担行為に構成市が責任を持たされることは明白である。よって、構成市の議会の議決を経ない本件債務負担行為に基づく契約は違法、無効である。

 

本件において訴外組合が当然考慮すべき事項(財源の確保)を考慮せず、財源確保のための対策をもしないまま、本件契約に係る債務負担行為を設定し契約の締結に至ったことはたことは、法214項、地方財政法41項の趣旨を没却する結果となることも明らかだから、本件契約の締結は、違法、不当なものである。

 

 (2)債務負担行為を予算に計上する際に必要な調書の添付がないこと

 

     普通地方公共団体の長は、予算を議会に提出するときは、政令で定める予算に関する説明書をあわせて提出しなければならない(法2112項)。同規定は訴外組合にも準用される(法292条)。

 

     そして、法2112項の政令で定める予算に関する説明書には、「債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末までの支出額又は支出額の見込み及び当該年度以降の支出予定額等に関する調書」が含まれるところ(法施行令14413号)、本件では、「当該年度以降の支出予定額等に関する調書」の添付がない。

 

     手続き違反であるから、本件契約に係る債務負担行為は違法であり、これに基づく本件契約の締結も違法である。

 

 2 本件契約が廃棄物処理法に違反すること(構成三市で不燃ごみとして収集したごみを焼却処理していること)

 

    廃棄物処理法では、市町村は、市町村の家庭と小規模事業者から排出される一般廃棄物について、各市町村でその処理に関する「一般廃棄物処理基本計画」を作成し(同法第6条の1項)、その「一般廃棄物処理基本計画」に基づき処理を進めること(同法第6条の二)が規定されている。

 

訴外組合は、同組合を構成する構成三市が、収集した一般廃棄物を焼却炉で焼却したり、破砕するいわゆる「中間処理」を担う自治法上の特別地方自治体である。

 

構成三市では、一般廃棄物を収集するに際して、大きくは「燃えるご み」(可燃ごみ)、「燃えないごみ」(不燃ごみ)、資源物などに分別したうえで収集し、その「可燃ごみ」「不燃ごみ」は、訴外組合に運び、可燃ごみは、焼却炉で焼却し、不燃ごみは、破砕処理し、減容化した上で資源処理に回したり、埋め立て処分することになっている。焼却炉で焼却した可燃ごみは、約一〇分の1の焼却灰が発生し、その焼却灰は埋め立て処分したり、エコセメント化する最終処分組合に運ばれることになっている。

 

ところが訴外組合では、構成三市から収集した不燃ごみのうち、2  015年度でいうと清瀬市77.6%、東久留米市77.4%、西東京市76.6%の割合で、焼却処理をしている。このように約8割弱の不燃ごみを、構成3市の基本計画に違反し、中間処理してきている。その結果不燃ごみを毎年約5000トン前後も違法に焼却している。

 

本件長期包括契約では、訴外組合で焼却する焼却量の基準を、この違法に不燃ごみを焼却することを前提に計画を立てている。

 

したがって、その分過大な処理計画となっている。

 

このように、本件契約は、構成3市では、不燃ごみとして分別させ、集めた ものを、訴外組合では、大半を焼却するという廃棄物処理法に違反し、かつ合理性のない過大な処理を前提とした契約となっている。

 

以上によれば、本件組合は、廃棄物処理法に違反する運用(不燃ごみを焼却処理する)に基づき本件契約の内容に合意し、契約を締結したものである。本件契約の締結に、裁量権の著しい逸脱又は濫用があったことは明らかである。

 

 

 

 3 過剰な数の焼却炉の運転管理を委託業務の対象にしていること

 

    訴外組合では、焼却するごみ量は、減り続けている。一方構成3市でも、有料化や有料袋の値段を高めることによるごみの減量化への試みは、今も続けられている。一方、現在、訴外組合では、3炉の焼却炉を保有している。1炉あたりの処理能力は日量105トンである。

 

当然今後の3市でのごみの減量化の取り組みとその予測量を考えた時、これまでのように3炉の焼却炉を保有し、維持しなければならないのかの検討も行う必要がある。もし1炉でも完全に稼働を中止すれば、その維持管理に関する費用は、大きく削減できる。

 

より具体的に言うと、訴外組合では、現状では、3炉を順次稼働させるように、ローテーションを組みながら運転している。3炉それぞれ、長期間の運転休止中にメンテナンスを行い、いわば必要以上にゆとりのある運転をしている。

 

すでに、焼却量は減少の一途をたどり、現状では年間64,000トンが焼却されている。これは2炉を運転すれば304日で焼却できる数量であり、1炉あたり年間2か月の休炉期間を設けることが可能である。したがって運転に必要なメンテナンスを行う期間を十分に取ることができる。残る1炉はまったく稼働させる必要がない。つまり、訴外組合は炉を休ませる休炉期間を含めて2炉を保有すれば足りるのである。

 

2炉の保有で済むのであれば、委託費は大幅に減少する。しかし訴外組合は、不燃ごみを焼却することを前提にごみ処理量を過大に見積もり、3炉保有することとする本件契約を締結した。

 

 

 

しかし本件長期包括契約は、構成3市に提案了承することなく進めてきたこともあって、そうした基本的な面での検討も行われていない。

 

もし焼却炉の数が、1炉減れば、その稼働やメンテナンスに要する諸費用が大幅に減り、そのような検討を行うことなく計画し、契約してきた本件契約の自治法に照らしても違法性は明らかである

 

 

 

 4 本契約内容に直ちに必要のない大規模改修が含まれていること

 

本件組合は、平成12年に焼却炉を建てたあと、起債により平成14年から15年間かけて、債務の返済を行ってきた。同返済は平成28年度に終わったところ、本件組合は、同年4月に本件契約を締結し、住友重機械エンバイロメント株式会社(以下「住友エンバイロメント社」という。)をして大規模改修工事に着手させたものである。

 

一般論として、焼却炉は、毎年のメンテナンスが適切に行われている場合、大規模修繕を行わなくても30年程度は使用し続けることが可能である。また、すでに述べた通り、訴外組合の焼却炉は非常にゆとりある運転を行ってきており、その意味でも十分なメンテナンスが行われてきたことは容易に見て取ることができる。しかしながら、本件組合は、稼

 

働し始めてわずか17年で大規模修繕に着手させた。

 

訴外組合が焼却施設の耐用年数に関する資料として唯一示されたものは環境省のホームページで公表されている「廃棄物処理施設長寿命化総合計画作成の手引(焼却施設編)平成22年3月・平成27年改訂」という。しかしながら訴外組合はこの資料で実施を促している大規模改修の必要性を検討した資料をはじめ各種検討すべき資料を持ち合わせていない。つまり、大規模修繕の必要性の検討もないまま対規模修繕に入っていると言える。

 

地方財政法5条の2には起債の償還期間は耐用年数を超えて設定してはならない旨定められている。つまり、償還期間中に、補修工事や工事のやり直しなどが行われ、公共事業に新たな財政負担が生じることが無いようにすること、つまり償還後ゆとりを持って保持することが想定されているものである。しかしながら、本件契約は償還の完了直後に行われており、大規模改修の必要性が強く疑われるものである。本件契約にあたっての議会への説明では、大規模改修後15年間の運転を経てさらに5年程度の運転が想定されている。様々な点から言って、新設から17年で大規模改修が必要であるとの説明には根拠がない。

 

このように、本来考慮すべきことを考慮しないでなされた本件契約の締結には、重大な瑕疵があり、違法・無効である。

 

 

 

 5 実質的に随意契約であること

 

     本件組合の焼却炉は住重環境エンジニアリング株式会社が2000年に建設し、その後行なわれた焼却炉のメンテナンス工事も同社が随意契約により行なった。

 

本件においては柳泉園組合クリーンポート長期包括委託審査委員会において契約方式の決定を行い、入札方式を「総合評価一般競争入札」を選定し、契約業者の選定を行ない住重環境エンジニアリング株式会社本件契約の業者とした。

 

住重環境エンジニアリング株式会社は柳泉園組合焼却炉建設後もメンテナンス工事を随意契約により継続して行なってきたものであり、このことから本件の契約業者、住重環境エンジニアリング株式会社の選定は“当然”の結果だった、といえる。もちろんこれは、本件入札方式を善しとする主張ではなく、あまりにもひどく、悪い意味での心配・予測の範囲という意味である。

 

改めて、本来、業者選定は一般競争入札による行なうべきであると主張したい。

 

訴外組合は、随意契約の要件(法2342項、法施行令167条の2)を潜脱するために、形式的に総合評価一般競争入札を採用したものである、このような法の趣旨を潜脱する方法により選定された業者とのあいだで締結された本件契約は、違法である。

 

 

 

注) 本件契約業者名、別紙による。

 

メンテナンス工事業社名は確認できず。