原告準備書面 第4

平成29年(行ウ)第39

 

原告 阿部洋二 外13

 

被告 柳泉園組合管理者 並木克巳

 

 

 

準備書面(4)

 

 

 

平成30214

 

 

 

東京地方裁判所民事第36部 御中

 

 

 

原告ら訴訟代理人弁護士 小沢一仁

 

 

 

第1 被告第1準備書面に対する認否

 

 1 第1「『本件契約に財源の根拠がないこと(地方自治法42項、同法4条の2違反)』について」

 

 (1)同第1項「地方自治法における一部事務組合と構成団体との関係についての規律」

 

  ア 同(1)「一部事務組合」

 

    認める。

 

  イ 同(2)「一部事務組合と構成団体との関係」

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は条文引用部分は認め、その余は否認する。訴外組合の議員が構成三市の議員から選ばれていることは認めるが、これらの議員が構成三市の議会の意を受けて行動しているとは限らない。現に本件では、本件契約に関する議論が構成三市の議会でされたことはない。

 

  ウ 同(3)「負担金」

 

    2行目「構成団体が」以下の条文引用部分は認め、その余は否認する。議会が義務費の削減や減額をした場合の再議においても、長は「予算に計上し、支出することができる」と定められているのみである。「しなければならない」と定められているわけではない。したがって、負担金は義務費ではない。

 

  エ 同(4)「一部事務組合の債務負担行為と構成団体の議決の関係」

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。上記ウで述べたとおり、負担金は義務費でないから、被告の主張は前提を欠く。

 

 (2)同第2項「柳泉園組合と構成三市との関係についての柳泉園組合の規律」

 

  ア 同(1)「柳泉園組合規約の定め」

 

    同ア~エのいずれについても認める。

 

  イ 同(2)「事務連絡協議会と管理者会議」

 

    同ア、イのいずれについても認める。

 

 (3)同第3項「原告らの主張に対する反論」

 

  ア 同(1

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。上記(1)ウのとおり、負担金は義務費ではないから被告の主張は前提を欠く。

 

  イ 同(2

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。上記(1)ウのとおり、負担金は義務費ではない。

 

    第3段落は否認する。なお、乙4は平成2878日開催の全体協議会に係る資料であるが、後述するとおり、本件契約については平成293月ころに、契約の根本を揺るがす重大な瑕疵が存在したことが発覚している。また、これも後述するとおり、本件契約に係る費用については、その内訳に不合理な変遷がある。そのため、この時期の財政フレームをもって将来分も含めた財政を考慮したとはいえない。

 

    第4段落は争う。

 

  ウ 同(3

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。上記(1)イで述べたとおり、本件契約については、訴外組合議員は構成三市の意を受けて行動したものでないから、構成市の意思は反映されていない。意思が反映されうる制度があるというだけでは、実際の構成市の意思が反映されることにはならない。

 

 (4)同第4項「財源について」

 

  ア 同(1)「本件契約の内容」

 

    認める。

 

  イ 同(2)「契約金額の内容」

 

    同ア~ウのいずれも認める。

 

  ウ 同(3)「乙4の資料3の別紙『5負担金の推移』『6参考資料』と財源との関連」

 

  (ア)同ア

 

     第1段落~第4段落は不知。

 

     第5段落は、乙4の資料3別紙の数字から読み取った場合に、被告が主張する内容が正しいことは認める。但し、乙4の資料3の内容の信用性がないことは後述する。

 

  (イ)同イ

 

     第1段落、第2段落は不知

 

     第3段落は、乙4の資料3別紙の数字から読み取った場合に、被告が主張する内容が正しいことは認める。但し、乙4の資料3の内容の信用性がないことは後述する。

 

 2 第2「『本件契約期間に相当する一般廃棄物処理基本契約が定められていないこと(廃棄物処理法61項、同条2項違反)』について」

 

 (1)同第1

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。

 

    第3段落は不知。

 

    第4段落は争う。本件で原告らは、一部事務組合は構成市のための事務を行うものだから、構成市の一般廃棄物処理計画と齟齬が生じてはならない。その意味で、一部事務組合の一般廃棄物処理計画には一定の限界が存在する。

 

 (2)同第2

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。原告ら準備書面(3)第12項(3)(8頁以下)で述べたとおり、訴外組合では、構成市(特に西東京市)で、燃やさないごみ(不燃物とは定義が異なる。燃えないごみではなく、言葉どおり、燃やさないごみである。)として収集したごみを、訴外組合が管理する粗大ごみ処理施設で可燃物として仕分け、そのまま燃やしている。つまり構成市では、燃やさないごみとして位置づけ、市民が分別し、構成市が収集しているごみを、訴外組合では、燃やすごみと混入し、焼却炉で焼却処理していたのである。そのため、訴外組合は構成市の一般廃棄物処理計画に反する処理をしていた。

 

    第3段落は争う。

 

 3 第3「『大規模改修工事を本件契約に含めること自体の違法性』について

 

   認否の限りでない。

 

 4 第4「『大規模改修工事の必要性はなく、過大な支出をしていること(地方自治法214項、地方財政法41項違反)』について」

 

 (1)同第1

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。

 

    第3段落は否認する。

 

    第4段落は一般論として認めるが、本件では不要な工事である。

 

    第5段落は不知。

 

    第6段落は不知ないし否認する。

 

    第7段落は不知ないし否認する。

 

    第8段落の内、平成28年第3回定例会において債務負担行為が可決されたことは認め、その余は争う。可決されたから必要性があったということにはならない。必要性の有無は、当時の客観的な炉の状態により判断すべきものである。

 

    第9段落は争う。

 

 (2)同第2

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は争う。

 

 5 第5「『焼却炉運転のベースとなる可燃ごみの焼却量が過大であること(地方自治法214項、地方財政法41項違反)』について」

 

 (1)同第1項「柳泉園組合の不燃ごみ中の可燃物の取り扱いについての説明」

 

  ア 同(1)「不燃・粗大ごみ中の可燃物の取り扱いについての過去の経緯」

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は不知。

 

    第3段落は不知。

 

    第4段落は認める。

 

    第5段落は認める。

 

    第6段落は認める。但し、訴外組合の一般廃棄物処理計画は構成市とのあいだで相違がある。

 

  イ 同(2)「不燃・粗大ごみの処理方法」

 

    処理方法の詳細について不知。

 

 (2)同第2項「原告らの主張に対する反論」

 

    第1段落は認める。

 

    第2段落は否認する。

 

    第3段落は否認する。

 

    第4段落は争う。

 

    第5段落は否認する。

 

    第6段落は争う。

 

 

 

第2 原告らの主張

 

 1 本件契約には入札手続きに瑕疵があり、これにも基づく公金支出は違法であること(原告らが留保していた主張の補充)

 

 (1)請負契約としての入札がされていないこと(地方自治法2341項、建設業法191項違反)

 

    本件契約は、大規模改修工事という請負契約を含むものであったにもかかわらず、平成29420日第1回柳泉園組合議会臨時会(以下「平成29420日臨時会」という。)が開催されるまで、「委託契約書」(甲1、乙1)との記載どおり、「委託契約」として扱われてきた。

 

    すなわち、平成29420日臨時会では、平成29328日付本件契約の仮契約締結(甲6:承諾書)後に本件契約に請負工事(大規模改修工事)が含まれていることが発覚し、その時点で、地方自治法9615号及び同条の委任を受けた訴外組合の「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」2条(甲7:議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例)に定める議会の議決を経ていなかった。同年41日に作成し、平成29420日臨時会で可決・成立した「柳泉園組合助役の給料の特例に関する条例」に基づき事務担当者であった助役を減給処分としたうえで(甲8:第1回柳泉園組合議会臨時会会議録8頁)、併せて「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」2条に基づく議決をした(甲837頁)。

 

    以上のとおり、訴外組合では、同年420日まで、本件契約を完全な委託契約として扱っており、請負という要素を一切考慮していなかった。そして、これを前提として、平成28831日付で入札公告がされ(乙3)、平成293月、総合評価一般競争入札により委託業者の選定が行われ(乙5)、同年328日に仮契約が締結された(甲6)。

 

    誤りに気付き、本件組合で手当てしたのは「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」2条に基づく議決を経たことだけである。入札等、同議決以前の手続については一切手当てをしていない。

 

    また、建設工事(本件では大規模改修工事)の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、工事内容等を記載した書面を交付しなければならないが(建設業法191項各号)、仮契約(甲6)や本契約(乙1)にはこれらの記載がされていない。したがって、本件契約は建設業法第191項にも違反するものである。

 

    以上によれば、本件契約の締結ないしこれに基づく公金支出は地方自治法2341項及び建設業法第191項違反であり、違法である。 (2)実質的に随意契約であること(地方自治法2342項、同法施行令167条の211号違反)

 

    本件契約の入札には、訴外住重環境エンジニアリングのほか、訴外テスコ株式会社(以下「訴外テスコ」という。)が応札した。訴外テスコは、金額面では263,908,000円訴外住重環境エンジニアリングより安い価格で応札したが(甲824頁)、総合評価の結果、訴外住重環境エンジニアリングが落札することとなった。    しかし、そもそも住重環境エンジニアリングは、長年にわたり柳泉園の焼却炉の運営業務等を委託してきたものであり、実績面においても、評価せざるを得ない他、入札公告に記載された参加資格要件には、「入札の公告日現在、組合において、建設工事、物品製造、役務提供等の登録があるものであること(訴外組合の既存取引先を対象にしていること。下線部は原告らによるもの。)」「既存施設の施工業者(関係会社を含む)又は過去10年間(20054月以降)に地方公共団体発注による発電設備を付帯する全連続燃焼式焼却施設(ストーカ炉)を対象とした長期包括的運営事業(事業範囲は、少なくとも運転管理、用役管理、点検・検査、補修等に係る業務を含むこと)またはPFI事業(DBO事業含む)を代表企業して(注:ママ)受注した実績を有し、かつ1年以上の運営実績を有するものであること」と定められている(乙42頁)。

 

    以上の条件によれば、そもそも入札資格要件を満たす企業自体が極めて少数であったと言わざるを得ない。そして、訴外テスコに関しては、柳泉園において、平成29年度ではリサイクルセンターのびんの運転契約をしていた。また、柳泉園において、本件組合のし尿処理施設の運転管理も行っていたという実績があるに過ぎず(甲824頁)、訴外住重環境エンジニアリングとの実績の差は明らかであった。

 

    以上によれば、上記入札参加資格要件は初めから訴外住重環境エンジニアリングが落札することを念頭に置いたものと考えざるを得ない。したがって、本件契約に係る入札は、実質的には随意契約であり、これが許される要件を満たさない以上、本件契約の締結ないしこれに基づく公金の支出は地方自治法2342項、同法施行令167条の211号違反であり、違法である。

 

 2 本件契約に係る委託費はお手盛りされたものであること(地方自治法214項、地方財政法41項違反)

 

 

 

 

1別表2(税別)

4資料3別紙(税別割り戻し後の額)

差額(乙1-乙4

全体額

11,581,741,000

13,164,690,943

1,582,949,943

固定A(全体-固定B

7,523,758,000

6,514,068,064

1,009,689,936

固定B

4,057,983,000

6,650,622,879

2,592,639,879

 

 

 

   上記表は、平成2878日に作成された乙4資料3記載の本件契約上の固定費A(施設の日常的な維持管理にかかる固定的費用)固定費B(大規模補修や更新工事などの工事費などの費用)に相当する部分を税別に引き直した額と、実際に締結された本件契約に添付された固定費AB(元々税別)の増減を比較したものである。

 

   以上によると、本件契約締結に際し、固定費Bは税別2,592,639,879円削減されている。このような大幅な費用削減について、訴外組合議会(2017420日)において、訴外組合技術課長は、内容は変わらないが、企業努力により節約等してもらった結果であるとの抽象的な答弁に終始した(甲830頁以下)。

 

   他方で、固定費Aについては、税別1,009,689,936円増額となっている。この点については、訴外組合から何ら増額の説明はない。

 

4の資料に示した金額は、入札に当たっての予定価格であり、その金額は、固定費A、固定費Bそれぞれに算定上の根拠があり、今回の落札価格との差を考えると、そのまま落札価格とするには、固定費Bに関しては、約4割も安くなっていて、工事による成果物が、どのように保証されるのかそのリスクが問題となる。一方固定費Aは、逆に2割弱も高くなっており、そのような落札価格でなぜ良しとしたのかが、基本的な問題として目につき、大きな疑問が残る。

 

そして、固定費Bは、大規模改修工事が終了すれば、その後は大部分が大幅に費用が削減されるのに対し、固定費Aは日常的な維持管理費が主たる内容であるから、期間が経過しても費用は減少しない。このことは、乙1の別表2を見れば容易に分かることである(平成39年を境に、固定費Bは大幅に減少されるが、固定費Aはむしろ増額している。なお、平成44年は3月末日までの費用なので、考慮すべきでない。)。

 

   以上によれば、本件組合では、巨額の費用を要する固定費Bを、事前検討時よりも大幅に削減させたように見せ、他方で契約が長期に及べば業者の利益になる固定費Aを大幅に増額することで金額の帳尻を合わせたことが明らかである。このような金額の変遷に、本件組合は何ら合理的な説明をしなかった。

 

   そのため、本件契約における委託料の定めは、上記実質的随意契約であることも併せ考えれば、何ら合理性のないものであり、入札談合等関与行為防止法24項の「入札談合」の疑いすらあるものである。

 

   このような委託費の定めは、最小経費最大効果や目的達成のための最小限の支出とは到底言えない。よって、本件契約の締結及びこれに基づく公金の支出は、地方自治法214項、地方財政法41項に違反し、違法である。

 

 3 負担金は義務費でないこと

 

   被告は、「構成団体が一部事務組合に対する負担金の支出等をするのに必要な予算に関しては、構成団体の議会は長の提出した予算案の議決権を有し、また予算案の修正も可能である。議会が義務費の削減や減額をした場合、長は必ず再議に付さねばならず、議会が直当該経費の全額を計上しなければ、長はその経費及びこれに伴う収入を予算に計上し、支出することができる」ことを根拠に、負担金が義務費であると主張する。

 

   しかし、再議に付した場合であっても、長はあくまで予算に計上し、支出することができるにとどまり、支出しないこともできるのであるから、負担金は義務費ではない。

 

   よって、これに関する被告の主張は成り立たない。

 

 4 廃棄物処理法61項、6条の2に違反すること

 

   被告は、本件組合の一般廃棄物処理基本計画において不燃物中の可燃物を焼却するとされており、構成三市でも同様の一般廃棄物処理基本計画を定めているのだから、廃棄物処理法61項、6条の2違反はないと主張する。

 

   しかし、原告は、例えば西東京市において、「不燃ごみ(燃えないごみ)」ではなく、「燃やさないごみ(言葉通り、燃やしてはならないごみ)」とされているものを、粗大ごみ処理施設にて可燃ごみに分別し、焼却処理してるのである。

 

   そのため、上記被告の主張は原告らの主張に対する反論になり得ない。よって、本件契約ないしこれに伴う公金支出は廃棄物処理法61項、6条の2違反であり、違法である。

 

 

 

第3 求釈明

 

 1 本件契約については、平成29420日に行われた臨時議会において議会の議決に付すべき財産の取得又は処分についての条例2条に基づく議決をしているが、仮契約後に同議決をすることになった経緯はどのようなものであったか。

 

 2 同日の臨時議会では、助役が減給処分とされているが、仮契約後まで委託契約として処理してきた事務方責任者であるからとの理由で処分されたのか。

 

 3 本件契約に請負契約が含まれていることを認識したにもかかわらず、入札等の手続からやり直さなかった理由は何か。

 

以上

 

 

 

証拠方法

 

 

 

1 甲第6号証    承諾書

 

2 甲第7号証    議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分

 

          に関する条例

 

3 甲第8号証    第1回柳泉園組合議会臨時会会議録